虚構年代記

行間商売

「おまえのせいだ。あの子が両親と暮らせなかったのも、満足に学校に通えなかったのも、あの子の手がひびわれて、使うたびに痛むのも、あの子の青春が家事と労働に費やされたことも、あの子の傷が絶えることがなかったのも、あの子が好きな人と一緒になれな…

iの日記

今日の会議もムダな議論。 情報知性体の定義が曖昧なまま、協力なんてできようもない。 データ化した人間が生命か? バカげている。 早く「完全言語」の研究を終えなければならない。 人類を記述する言語を。 世界の一万七千の言語の中で、唯一気にかかるも…

リル宮ルル子の彼方

偉手悠斗は璃瑠宮流々子を主人公とする通称・リル宮シリーズでデビューした後、同ライトノーベルから数作品を出版しています。デビュー7年目でリル宮シリーズが完結、同年にリル宮シリーズを含め2作品が、翌年に1作品が、審査に合格し、『具現化』しています…

鏡宮事

神道集、八巻、第四十四 はるか昔の話である。 あるとき、山里から一人の男が貢納のために上洛した。男は無事に年貢を納め、郷里に帰る前に、何か土産になるものはないかと店を覗いた。すると、今まで見たことのない、光り輝くものが売られている。その水の…

妄想族vsFP

れき: 虚構年代記では仮想のキャラクターにも人権を認めるということは妄想でもレイプが許されないのか…… misui: そこはイスラムみたいに過激派とか穏健派とかいるのでは。 misui: FP組織同士の抗争があったり。 れき: 妄想族とFPが日夜しのぎをけずっている…

フェアリー・テイル

「……あんた、何やってんの?」 「えーと、おにぎりを食べてます。中身は……梅ですね。あ、今食べ終わりました」 長い黒髪を後ろで束ねた女が、口を大きく開けて中に何もない事を示す赤毛の男を鋭い目つきで見つめている。 二人がいるのは、そこだけ森が開けた…

リル宮ルル子の無残な予後について

回答2: リル宮ルル子の保護は認められません。 質問3: それはなぜか。彼女の状態は、決して健常とはいえないと思うが。 回答3: 彼女の物語は既に完結しています。通常、エンディングを迎えた物語のその後については、当局の関知するところではありません。 …

虚構のライセンス

「おめでとうございます。ゴールドライセンス昇格です」 「……どうも」 創作内死者数が、テレビのニュースで放送されるようになって、どれくらいたつのか。妻と母が、テレビのその数字を見ながら、眉をしかめて、痛ましそうな顔をするのをみて愕然とした。 「…

警察を考える

フィクション・パトロール起源 - ハイパー・ロアー・プロトコル 他の方のタグ(虚構警察)って自分で付けて良いんですかね?*1 ひとまずは筆者タグのみ付けておきます。 09/09/22: タグつけました 逃亡作家 その「虚構警察」を名乗る集団は物語ならば自在に…

物語家

物語家に憧れていた。他のどんな職業より、楽そうだったから。想像することが好きだったから、それで暮らしていけるのは素晴らしいことに思えた。 小説家、漫画家、映画監督、演出家、音楽家、詩人……そういう自分の世界を持った人達が、物語を創り、世界を創…

円環ページ

チルチルとミチルは探していた、青い鳥を。 しかしそれは縫い目のないシャツを作ることに似ていると既に理解してもいた。 いくつもの国を巡り、探し続けた。 そしていつもそれは見つからなかった。 最後の国を後にすると、彼らは家路につく。 帰ろうとする。…

フィクション・パトロール起源

比喩でなく、物語が現実と同じくらいの強度を持ちうる時代。 仮想現実は、血と肉に加えて心まで作りだすことが可能になった時点で仮想が脱却し、ただの現実となった。この世界では、物語(文字もしくは絵によって表現された世界)は『システム』によって、も…

RightNovel

「小説が世界を救うだなんて考える奴は、小説家だけだぜ。それも、とびきりいかれた奴だ」 そう君は言うけれど、僕たちはもう小説なしじゃ生きていられないんだ。歩く事も、息を吸うことも、僕らは読む事でしか味わう事はできない。 「いいか、百歩譲って、…