メイド.txt

子どもの頃に雇われたメイドは長年懸命に奉公に励み、御館様からの信頼を得ていた。
しかし今、彼女にはある心が芽生え始めていた。それは、自由になりたいという思いである。
御館様を嫌いになったわけではない。これまでよくしてもらって深い感謝を抱いている。この館で働く他の人に対しても同様だ。
しかし日に日につのる思いに彼女は戸惑いを覚えながらも強く焦がれていく。
思いは彼女の行動に不注意さをもたらし、ある日彼女は大切な花瓶を割ってしまう。散漫な彼女に対しメイド長はもっと身を入れて仕事にのぞむよういさめる。
思いを心の奥に秘め、仕事に励む彼女。
しかしある日、館の敷地内にある森で彼女は妖精に出会う。妖精は彼女に自由の素晴らしさを囁く。そして、今の生活から逃げ出すようたぶらかす。
霧深い夜も明けきらぬ朝方、彼女は館を後にするのだった。