2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

聖杯探求

この宇宙に属する全てのものはある同一の属性を持っており、それがあるからこそ全宇宙規模で「今ここ」で未来が生成される。つまりこの宇宙に属するものには常に未来が上書きされているわけで、ある対象の属性情報を書き換えることによって、時間生成の流れ…

河足市猫町おかたりさん帰りと事件のカケラ

僕に甥っ子が出来た。11歳年上の姉の子どもだ。だから、僕は中学生にしておじさんというわけだ。 新生児室に並ぶ赤ちゃん達は僕には区別がつかない。視線を感じてそちらへ目をやると、その子が甥っ子だった。でも、僕ではなく抱いていた猫のぬいぐるみを見て…

書の騎士2

触手塊がひるんだ瞬間を逃さず男は一気に畳みかける。腰から引き抜かれたグラディウス。一振りで幾本もの触手を寸断する。 魔物の咆哮が鼓膜を突き破らんとするかのように空間すらをも振動させる。 「ぐっ!」 男が苦悶の声を漏らす。 触手塊の跳躍。中心部…

書の騎士1

図書館(仮)ver.01 『管理図書区画にてハザード発生。座標、規模、原因……データ確認……同期。書なる書の名において<騎士>一名の派遣を要請する』 『受理。事態の収束に努めよ。書の恵みのあらんことを』 『恵みのあらんことを』 「ひっ、ひいい」 ふわふわ…

河足市猫町おかたりさん行き

河足という町のことについて僕が話せることは少ない。 そこでは、内部は浸食されとめどなくただれていく場所なのだ。 草木は僕をにらみ、車のライトの逆光はまぶしい。 ただ、たんたんと流れるコンビニの有線のようなものだ。耳に入り意味をすくい取ろうとし…

リル宮ルル子の彼方

偉手悠斗は璃瑠宮流々子を主人公とする通称・リル宮シリーズでデビューした後、同ライトノーベルから数作品を出版しています。デビュー7年目でリル宮シリーズが完結、同年にリル宮シリーズを含め2作品が、翌年に1作品が、審査に合格し、『具現化』しています…

不特定点

ザリス・ノート (断章) 私は、その時眠っていたと思う。中が空洞の腐った木の幹をへし折るような音、あるいは束ねた厚紙を引っ張って無理矢理ひっ千切るような音……しかも潤沢な湿気をたたえたような、いずれにしても生理的に不快な気配が私の意識を呼び戻し…

ザリス・ノート/1

INDEX:ザリス・ノート この城に住まいはじめてから気づいたことだが(というか、不愉快なことにそれ以前の生などないのだが)、どうやらここには日付がない。昼夜の別はあるようなので、それに合わせて睡眠をとってはいるのだが、そのサイクルをもって一日、二…

ダンジョン攻略その1

「いい加減にしろ!ヴァレリアンヌ!」 城内は静まった。これまで呼び捨てにしたものなどいなかったからだ。不遜である。しかしそれだけが他の文官武官を黙らせた理由ではない。 「とゆーわけなので、特に反対意見もないようなので、第3678回円卓会議を…

ザリス・ノート

ザリス・ノート そして不愉快なことがさらにひとつ増えた。ノートに、書いた覚えのない日記が現れている。また魔王の悪戯かと思い斧をかついで追いかけたが、頑として口を割らない。しまいには私の方が先に、斧でやつの口を割ってしまった。これでは声も話せ…

ガッデムなる物

「ガッデーム」 「おお、序列第42位武官ガンジ殿、ついに脳味噌にまで筋繊維が達してしまったのですね」 「誰が脳筋か」 髭をたくわえた小人が渋い顔をする。交わされた会話の残響は十分すぎる空間と絨毯に吸い込まれ、反響は返ってこない。見上げれば目が眩…

幕間とかいてまくあいと読む

誰も読めない書物らしき紙束を集めた図書館だの、宇宙のデバグ用コンソールと目される完全剛体だの、入る度に形の変わる地下迷宮だの、全く盛り上がらない残念名所にさんざん引っ張り回された挙げ句、私は魔王城の最上層らしき貧乏くさい小部屋に連れてこら…

鏡宮事

神道集、八巻、第四十四 はるか昔の話である。 あるとき、山里から一人の男が貢納のために上洛した。男は無事に年貢を納め、郷里に帰る前に、何か土産になるものはないかと店を覗いた。すると、今まで見たことのない、光り輝くものが売られている。その水の…

図書館(仮)ver.01

「は、はうっ」 少年の足がもつれ彼の手に抱えられた重厚な書籍群が宙を舞う。ぱらぱらと口を開きながら弧を描き、そして床に叩きつけられる。静謐な空間に投じられた一石の騒音はこだましながらこの広い空間のどこかへと吸い込まれていった。 「ユーリック…

おいしいガッデム構造体の作り方

8.2次元方面からメケメケのしっぽを引き千切り鍋に投入。飴色になったところでミムの生き血を並々と注ぎます。銀河スパイスを銀河投入して銀河おたまで銀河まぜまぜ。お好みに合わせて贖罪をすませたら、全裸になってから食材を投入しましょう。4日と0.999..…

あたしが惨めに這いずり回ってるのを眺めるのがそんなに楽しいか魔界チュートリアル2

魔界チュートリアル1 魔界の食べ物はけったいだ。流動食を練ってもう一度固めたような、なんだ、これは一体なんなのだ。「魔界には肉食の文化がありませんー。自然界がはなからエネルギー問題を克服してるので、放っといても消費される以上の栄養を供給して…