四十四士

あらすじ

 古代ジャフハリム王朝時代末期、一代にて権勢をふるったレストロオセ妃は、夫王の死後隠居する。しかし、いまだ名高いその名声を恐れる施政者は、妃の暗殺を目論む。妃の四十四人の忠臣はこれを阻止し、彼女の逃走をよく助ける。度重なる追撃によって忠臣たちは倒れ、生き残った者たちも遂に地獄の底に追い詰められる。

バリエーション

 レストロオセと四十四士の伝説には数々のバリエーションが存在する。まず、レストロオセ妃を清廉潔白な聖母とするか、悪逆非道な姦婦とするかで、解釈が大きく分かれる。結末においては、多くの講談本において妃と忠臣たちが全滅する。別の異本では、七人の忠臣が裏切りによって自らレストロオセを手にかける。なお、いずれの場合も、妃と忠臣たちは死後に昇じて神(邪神)となる。

編者注

 レストロオセの忠士には四十四人版、七十七人版、百二十一人版があるが、ここでは四十四人版を採用する。ただし、この四十四人以外にも実在の認められる者たちのエピソードは適宜挿入する。

 底本としては、ヘンズホック『黎妃四十四臣逃散記』を用いるが、これはあくまで参考に留めるものであるため、翻訳というより編訳と解釈されるがよい。特に、現在判明している歴史的事実については、これに準じることをを最優先とする。