スピリチュアルペインズの断片

 自分の欲求を正確に認識しなさい、と先生は言った。

「自分の欲求を正確に認識しなさい。それができている人は、意外と少ない。欲求に対して行動を正常に接続できる人は、滞りなく目的を達成することができます。けれど、欲求と行動の接続に齟齬がある人は、そこに苦痛が生じます。自分の望んでいることをしているはずなのに、辛くて辛くて仕方ない。これは本当に自分の望んでいることなのか。こんなに辛いのは、それが自分の真の望みと異なるからではないか? そういった疑念に苛まれながら、それでも自分の信ずるところに齧りつくことの苦しみは想像を絶するものです。そういった底なしの沼に陥りたくなければ、あなた。自分の欲求を正確に認識しなさい。そうすることによってのみ、私たちはこの陥穽に対抗することができます」

 先生はそう言っていたが、当時の私には難しい話だった。今であれば、その意味がいくらかは理解できる。はたして私は、先生の言った通りにできているだろうか。ときどき、とても不安になる。日々のなんでもないようなことが、とても辛く感じられる。そういう瞬間が、たしかにある気がしてしまうのだ。