がらくたの重火器と、少女らの無数の屍

 ある種の娘たちは、なぜあのようにふるまうのか。現実的な困難や社会的不承認、あるいはより空想的な感覚に由来するスピリチュアルな痛みから己の身を守るため、いかなる現世的な武器も持たない無力な彼女らは、神秘と呼ぶにはあまりにも底の知れた安っぽいベールで己を包み込むしかなかったのだ。だから、そういった娘たちのことを、我々は少女と呼ぶ。

 少女らの実状は、いつもたやすく暴露される。彼女らがその短い半生をかけてようやく掴み取った唯一の武装は、ほんとうに力ある者の手によって、またたく間に引き剥がされる。彼女らの命がけの抵抗は、結局のところ泣き声や叫び声と変わらない。

 ひたすら奇矯な言動で現実に刃向かおうとした少女は、肉親の手によって息の根を止められた。ある少女の超俗的な振る舞いは、聞きかじりの知識で塗り固めた付け焼き刃の芝居に過ぎぬと暴かれた。少女らが最も愛した保護者たちは、彼女らの身体を使い捨ての盾として、銃雨の街を慎重に歩む。

 少女たちは、ひとり、ひとりと死んでいく。われわれの歩いてきた道は、少女らの無数の屍で溢れている。やがて、同胞たちはみな倒れ、ただ一人の少女だけが生き残る。最後の少女は表情もなく、同胞たちの亡骸を漁る。屍の指を一本一本引き剥がし、うち捨てられた神秘を担ぎあげる。たいていの場合、その神秘は重火器の形をしている。

 最後の少女は砲口を天に向け、弔砲のように轟音をかき鳴らす。華奢な身体は砲身を支えきれず、もてあそばれるように振り回される。大気を振るわす音圧のしびれ。しかし、これもしょせんは虚砲にすぎない。薄い戦幕を破ることすらかなわない、弱々しい楽器に過ぎない。敵の照準が合わさった時、彼らの放つ弾丸は彼女の額を正確に撃ち抜くだろう。

 戦場から少し離れたとこころで、私たちはときどき銃声を聞く。あっけない、一発で終わる銃声を聞く。その数瞬前に響いたやかましいがらくたの音は、私たちの心に残るだろうか?