架空ゲーム評:紀仙のナプサガプレイメモ

 やあ、悟りを開いて以来、アカシックレコードからDLしたレガシーゲームばっかりやってる紀仙だよ。今回プレイするレガシゲーはこの『ナプラサフラス・サーガ』、わが故郷パンゲイアの近世文化興隆時代を舞台としたフリーシナリオRPGだ。

 MMMODO(Massively MultiMODification Online) ということで、世界中のプレイヤーおよびMOD作者によってリアルタイムで作品内容が拡張され続けているのが本作の特徴だ。「ずっとα版!」なんて言われているけど、ちょっとやそっとのバグなら問題なく吸収してしまえるよう徹底的な抽象化が実践されたデザインはきわめて柔軟で、バグを制御可能な要素として肯定的に取り入れた作品だとも言われている。

 このゲームを製作した当時の文明はとっくに滅んじゃったけど、『ナプラサフラス・サーガ』のゲームエンジン自体はアカシックレコードにしっかりバックアップされていた。おかげで、僕らはゆうゆうとこの過去の遺産を肴にくっちゃべることができるというわけだ。基本バージョンを含めた多くの地理・イベント・キャラクター等のデータがロストしてしまったのは非常に残念だが、最近ではコアなレガシゲーマニアが積極的に本作のMODの再開発に取り組んでいる。『ナプラサフラス・サーガ』の作品世界は、ますます不整合な膨張を遂げつつあるというわけだ。

プレイ開始

 まずは主人公選択。デフォルト主人公としては、ゲームタイトルにもなっている「巡礼英雄ナプラサフラス」が設定されてるんだけど、あんまり正攻法で進めても面白くないのでパス。今回は大穴で、自分自身のストーリーをほとんど持たない異色主人公「黒衣の矮神マロゾロンド」を選択する。

 名前の通り、黒い布を全身にかぶって顔も見えないこいつがマロゾロンドだ。小動物を布きれで包んだようなちっこい体躯をしているが、これでれっきとした古き神の一柱なのだから侮ってはいけない。この奇妙な神についての伝承は枚挙にいとまがないが、その紹介に字数を費やすのもあれなので適当にぐぐっていただきたい。

 マジもんの神様であり、分類上は非人格神とされているだけあって、マロゾロンドの目的はプレイヤーにもよく分からない。他の主人公のように導入ストーリーがあるわけでもなく、いきなりワールドマップに放り出されるというのだから、恐ろしく玄人向けの主人公だ。そのぶん自由度は異様に高く設定されていて、その気になれば他の主人公のメインストーリーにまで介入できるという特徴がある。とりあえず誰か別のキャラクターを見つけて、そいつの後をつけ回すことにしよう。

 マロゾロンドは太古の時代から世界中を徘徊して回っていた奇怪な神なので、徒歩で立ち入ることのできるほぼ全てのマップ知識を最初から獲得している。このあたりも、マロゾロンドプレイの自由度を高めている要因の一つだ。まずは、この時代の政治・経済・文化・通信・軍事といったあらゆる文明要素の中心地、トルクルトアに向かうことにしよう。

 ちまちました作業的なレベル上げを良しとしないこのゲームでは、ワールドマップ上の移動が一瞬で行われる。目的地をクリックすれば、そこにはもう都市国家トルクルトアの見事な街眺が広がっている。多くのイベント、多くのキャラクターが集まる街でもあるので、序盤はとりあえずこの街目指して旅をする、というプレイヤーが圧倒的に多い。

ニースフリル姉さんをストーキング

 マロゾロンドほど神格の高い古代神がこんな街中をうろうろしてたら大騒ぎになりそうなものだが、「年に一度はすれ違う」と言われるくらいありふれた神でもあるので、人々の反応は慣れたものだ。道行く人にありがたやと拝まれたり、隠れた顔を確認しようと衣をのぞき込まれたり、モブの演出も芸が細かくてなかなか楽しい。

 非人格神であるマロゾロンドは他のキャラクターとの会話ができないので、とりあえず一人でもまともに喋れる人間を仲間に引き入れないことには、イベントを発動させることもままならない。というわけで最初の仲間に選んだのは、様々な方面に顔の利くトルクルトアの文化人、考古学者にして手紙魔のニースフリルだ。史実において、当時代のニースフリルは他の文化人との文通を通してしか存在が確認されていないのだけど、このゲームでは安宿に長泊して研究にふける彼女の姿をいつでも確認することができる。

 ニースフリルにはオリジナルイベント「神秘学者オルザウンとの接触」があり、よく街を出歩いているので、マロゾロンドはこれに張り付いてストーキングすることにする。最初は戸惑うニースフリルだが、言葉も通じなければ斬っても焼いてもびくともしないマロゾロンド相手にどうすることもできない。古代から生きる魔女という本性を持つ彼女は、マロゾロンドが敵意のない者に対して絶対的な人畜無害を貫く存在であることを知っているので、最終的には同行を黙認してくれるようになる。

 ニースフリルはオルザウンの住まうとされるあばら屋に足を運んでいるのだが、いつ行ってみても当人の姿はない。来訪を何度か繰り返すことでニースフリルはオルザウンの残した暗号を解き、ようやくイベントが発生する。ただし今回の主人公であるマロゾロンド自身は傍観者なので、最初と最後の来訪にだけ同行すればイベントを発生させることができる。

 暗号解除イベントが発生すると、オルザウンが潜んでいる不思議空間への扉が開く。しかしこの際、外世界へと通じた隙間から異形のアウターモンスターが飛び込んで来て、今回のプレイでは初めてのバトルが発生する。なお、このゲームには「勇者が旅立つ村の周りのモンスターは弱い」的な常識が通用しないので、まともなプレイングだとまずここで即死する。ためしにここで「助太刀しない」の選択肢を選ぶと、ニースフリルは最大HPの5倍を越えるダメージを食らってオーバーキル、「ギャー」と一言叫んでキャラクターグラフィックが消滅し、そのままイベントも終了する。なんのフォローもなく取り残されるマロゾロンドの姿がなかなかシュールだ。(このあたりの演出、妙にレトロゲーチックだなあ)

初戦闘と今後の方針

 ニースフリルを見殺しにすると話が進まないし、彼女の属する魔女姉妹連合からの報復イベントとかも発生していろいろと厄介だ。そもそもニースフリル姉さんは3回に2回はパーティに加える僕のお気に入りキャラなので、ここは素直に参戦しておく。

 バトル開始。マロゾロンドはあばら屋に落ちていた棒っ切れを掴み取って、戦闘画面に躍り出る。実はマロゾロンドの戦闘能力は初期状態から非常に高く、特に技巧(TEC)と敏捷(QUI)が半端ない。(通常プレイなら、いきなりラスボス戦パーティに加えても問題ないくらい) 敵の連続攻撃を立て続けに捌いて回避し、棒っ切れを繰り出して的確に急所を突く。数ターンすると対アウターモンスター限定の特殊スキル「フォドンの風」が使用可能になり、これで敵を外世界に送還して戦闘終了。*1

 戦闘終了後、世界の裏で暗躍する神々について語り合うニースフリルとオルザウンの怪しげな陰謀論を傍聴して、イベントは終了。とりあえずこの戦闘でニースフリルの信頼を得たことになり、以降は近場の安全なところであれば彼女を好きに連れ回すことができるようになる。彼女が仲間にいれば人と普通に会話ができるようになるため、発動可能なイベントがぐっと増えたというわけだ。

 こんな感じで人との縁を繋ぎ、徐々にイベントを進めていくのがこのゲームの基本的なプレイスタイルだ。マロゾロンドが主人公の場合、序盤の戦闘はかなりぬるいものになるのだけれど、一人では会話が不可能という特性上、なるべく多くのキャラクターと「無言の信頼」を築き上げて選択可能イベントを広げていく必要がある。というわけで、次回は仲間集めとイベント攻略を平行して進めていくことにしよう。(つづかない)

*1:ちなみに、ニースフリル一人でアウターモンスターに勝利するのはよほど鍛えない限り不可能。ニースフリルが主人公の場合は、通常、姉妹連合の強力な魔女を仲間に誘ってからここを訪れることになる。