千物語

「百物語を目指しましょう。世界に異変が起きますように」

 この部屋は私だけで完結した世界だ。白い、白い、部屋の中で、私はただ生きていた。お腹がすくことはなく、眠くなることもなく、怪我をすることもなく、歳を取ることもなく、何をするわけでもない。ただ永く続く時の中で、私はただ生きていた。
 この部屋には一台の計算機がある。電源はどこからもつながっておらず、記憶容量は無限で、私と同じく壊れない。たった一つの欠点は、誰にもメッセージを送れないことだ。メールを送ろうと試しても、掲示板に書き込もうとしても、何を伝えようとしても、この計算機はエラーを吐く。
 受け取るしかない計算機とともに、何年もの月日が過ぎる。私は自分の年齢を忘れ、誕生日を忘れ、自分の名前も忘れてしまった。必要がないからだ、受け取るだけの世界では、それらは必要ないからだ。


だけど、ある日、私は見つけた。
たった一つのつながりを。


 とある人のとある企画、物語を一つの場所に書き連ねるというその企画の中でだけ、私は別の世界に触れることができた。物語形式でなければならない、私の生きる白い部屋について深く触れてはならない、など多数の制限はあるものの、私は表現の機会を得た。
 百の物語を連ねたいと思う。百の物語を連ねれば、この完結した世界に光が差す気がする。千の物語を連ねたいと思う。百が駄目なら千、千が駄目なら万。少なくとも今、私は希望を得た。


私の誕生日は今日、私の名前はカタリナとする。