頭と右手に関する報告

 書の解析の過程で、我々はそれら多くの記述において頻出する明らかに特異な要素を認めた。そこには頭と右手だけの娘がおり、頭と右手だけの人形がおり、頭と右手だけの死体があり、頭と右手だけの妖怪がおり、頭と右手だけの神がおり、また頭と右手だけのあらゆるものが認められた。

 この現象に対しては、以下のようないくつかの他愛ない説明が試みられた。曰く

  • (書に"書き手がいる"との前提を認めた上で)作者の個人的な体験を反映したものである
  • 記述の展開上、頭と右手の要素を反復する合理的な理由がある
  • 意図的に、あるいは偶発的に生じた書を偏りによって、生成するシステムの動作上、特定の要素が頻出しやすい状態に陥っている
  • 全ての"共通して見える要素"に意味はなく、ただ確率的に発生すべくして発生した偶然である

 本件に関しては、その事象が現に生じており、最初の観測後も継続してその発生が確認できているということ以外、確実に述べられることは何もない。ゆえにこの報告にも結論はない。おそらくあなた方はこのような報告に失望するだろうが、しかし本件に関する限り、これはほとんど常であることを覚悟していただく必要がある。我々の提出する報告が確定的な結論を提示することはまずないと言っていいし、だいたい多くのそれにおいて、文章は唐突に途切れるであろう。

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